広島高等裁判所 昭和24年(う)642号 判決 1950年2月07日
被告人
山根利德
主文
原判決を破棄する。
被告人を懲役壱年六月に処する。
原審における未決勾留日数中弐拾日を右本刑に算入する。
原審及び当審における訴訟費用は全部被告人の負担とする。
理由
職権を以て案ずるに原審において取調べた被告人に対する前科調書の記載及び原審公判廷における被告人の供述記載を当審において取調べた岩國少年刑務所長の被告人の前科に関する回答書の記載に綜合して考えれば被告人は呉区裁判所において窃盜罪により(一)昭和二十一年一月七日懲役六月三年間執行の猶予の刑に処せられ、(二)同年六月十三日一年六月以上三年以下の懲役(未決勾留日数中六十日算入)(昭和二十一年勅令第五一二号減刑令により懲役一年二十日以上二年十九日以下に変更)に処せられ(一)の執行猶豫の取消を受け、当時右各刑の執行を受け終つたものであることが明白であり原審の認定したところによれば被告人は昭和二十四年八月十三日午後九時頃呉市仁方町介方棧橋西側に碇泊中の備後丸で、同船機関士木本善太郞所有の冬服三ツ揃一着外衣類等三十五点を竊取したというのであるから右犯罪事実は右二個の受刑事実に対し累犯の関係にたつものである。然るに原裁判所は昭和二十四年十月十一日附公判調書によれば、前記被告人の受刑事項につきこれを審理しながら、その判決に摘示することなく又累犯加重の法令を適用していない。右は判決に影響を及ぼすべき法令の適用に誤があるものというべく量刑不当に関する控訴趣意につき判断するまでもなく本件控訴はこの点において理由あり、破棄を免れない。